おはこんにちばんわ
長野県白馬村の小さな珈琲屋ガクです。
はじめに
コーヒー業界において、
アナエロビックファーメンテーションは革新的な製造プロセスとして注目を集めています。
この手法は通常の発酵方法とは一線を画し、
酸素を遮断した環境で微生物による嫌気性発酵を行うことで、
コーヒーに独特の風味を与えます。
本日は、
このアナエロビックファーメンテーションの特徴について詳しく解説していきます。
アナエロビックファーメンテーションとは

アナエロビックファーメンテーションは、
嫌気性発酵を利用したコーヒー豆の精製方法です。
この手法の最大の特徴は、
酸素を遮断した密閉された空間で発酵を行うことにあります。
酸素を遮断した発酵環境
従来の発酵方法では、
酸素の存在下で好気性の微生物が活動し、
発酵が進行します。
一方、
アナエロビックファーメンテーションでは、
コーヒーチェリーやパーチメントを密閉容器に入れ、
酸素を遮断した環境で嫌気性微生物による発酵を行います。
このプロセスにより、
従来の発酵方法とは全く異なる独特の風味が生み出されるのです。
酸素を遮断するためには、
容器に窒素やCO2を注入したり、
真空状態を作り出したりと、
様々な工夫が行われています。
発酵期間中は、
容器内の状況を常にモニタリングし、
適切な環境を維持することが重要となります。
発酵期間の長さ
アナエロビックファーメンテーションの大きな特徴の一つに、
長期間の発酵期間が挙げられます。
通常の発酵プロセスが24~48時間程度であるのに対し、
アナエロビックファーメンテーションでは48時間から96時間、
場合によっては2週間以上にも及ぶ長期発酵が行われます。
この長期発酵により、
コーヒー豆に複雑でディープな風味が付与されます。
発酵期間中、
嫌気性微生物が豆の成分を徐々に分解・変化させることで、
新たな香り成分が生成されるのです。
しかし一方で、
過度の発酵は品質低下の原因にもなるため、
適切な管理が欠かせません。
アナエロビックコーヒーの特徴的な風味

アナエロビックファーメンテーションの最大の魅力は、
生み出される独特の風味にあります。
従来の発酵方法とは一線を画す、
非常にユニークな味わいが楽しめます。
フルーティーな香りと甘み
アナエロビックコーヒーの代表的な特徴は、
強烈なフルーツのような香りと甘みです。
トロピカルフルーツ、ベリー、パイナップルなどの香りが感じられ、
甘みも非常に豊かです。
これは、
発酵中に生成されるエステル化合物やアルコール成分によるものと考えられています。
また、
通常のコーヒーにはあまり感じられない、
ワインやリキュールのような香りも楽しめます。
嫌気性発酵ならではの香り成分が生み出されるためで、
まさにコーヒーの新しい可能性を体験できる味わいといえるでしょう。
まろやかな質感とコクの深さ
アナエロビックコーヒーは、
香りや風味だけでなく、
まろやかでコクのある質感も魅力的です。
長期発酵によってコーヒー豆の成分が分解・変化することで、
これまでにないスムーズでベルベットのような口当たりが生まれるのです。
さらに、
発酵による豊かな旨味成分の生成により、
奥行きのある深いコクを感じられます。
一口飲むだけで、
複雑で多様な味わいを楽しめるのがアナエロビックコーヒーの醍醐味です。
様々な発酵手法の存在

アナエロビックファーメンテーションには、
密閉容器を使った基本的な手法以外にも、
様々な発展的な発酵手法が存在します。
生産者たちは、
新たな風味の追求に日々挑戦を続けています。
ダブルアナエロビック
ダブルアナエロビックとは、
2度の嫌気性発酵を行う手法です。
最初にコーヒーチェリーを密閉容器で発酵させた後、
さらに豆のみを別の容器で2度目の発酵を行います。
この2重の発酵により、
非常に強い発酵香と風味が生み出されます。
特に中国雲南地方で多く行われており、
この地域のコーヒーの個性的な味わいの源となっています。
ただし、
発酵が過度に進行すると品質が大きく損なわれる可能性もあるため、
適切な管理が欠かせません。
生産者の高度な技術と経験が必要とされる手法でもあります。
カーボニックマセレーション
カーボニックマセレーションは、
CO2を使った発酵手法です。
コーヒーチェリーを密閉容器に入れ、
CO2を注入して嫌気性環境を作り出します。
これにより、
より強くフルーティーで複雑な風味が生み出されるとされています。
CO2の導入量や圧力、
温度などを調整することで、
発酵の度合いをコントロールできるのがこの手法のメリットです。
CO2が持つ独特の刺激的な風味も加わり、
より個性的な味わいのコーヒーが生まれます。
アナエロビックファーメンテーションの課題

アナエロビックファーメンテーションは魅力的な手法ですが、
一方で幾つかの課題も存在します。
生産者や消費者双方にとって、
これらの課題を認識しておくことが重要です。
発酵管理の難しさ
アナエロビックファーメンテーションで最も重要なのが、
適切な発酵管理です。
嫌気性環境を維持しながら、
過度の発酵や腐敗を防ぐため、
温度や湿度、
微生物の活動などを常に監視する必要があります。
経験とノウハウが不可欠であり、
管理ミスが品質に直結するため、
非常に高度なスキルが求められます。
また、
発酵期間が長期に及ぶため、
長期的なモニタリングも欠かせません。
多大な手間と時間を要する手法であり、
その難易度の高さが生産者にとっての大きな課題となっています。
高コストとリスク
アナエロビックファーメンテーションには、
施設への大規模な設備投資が必要なことが多く、
その初期コストが高額になる傾向にあります。
密閉容器やガス供給システム、
温度管理装置など、
適切な環境を整える必要があるためです。
さらに、
発酵の過程で品質が損なわれ、
コーヒーが利用できなくなるリスクも存在します。
発酵の失敗は経済的な損失にもつながるため、
生産者は常に細心の注意を払わなければなりません。
高コストとリスクへの対応が、
この手法の普及を妨げている一因となっています。
まとめ
アナエロビックファーメンテーションは、
コーヒー業界に新風を吹き込んだ革新的な精製手法です。
酸素を遮断した嫌気性環境での発酵により、
従来の製法とは全く異なる個性的な風味が生み出されることが最大の特徴です。
強烈なフルーティー香と甘み、
まろやかでコクのある味わいが楽しめ、
コーヒーの新しい可能性を体感できるでしょう。
一方で、
発酵管理の難しさやコスト面での課題も存在します。
生産者の高度な技術と経験、
設備投資が必要不可欠であり、
その点でハードルは高くなっています。
しかし、
アナエロビックコーヒーの魅力は確かなものであり、
今後さらに研究と改良が進むことで、
より多くの人々に味わっていただける日が来るに違いありません。
コーヒー文化の新たな地平を切り開く手法として、
その可能性に期待がかかっています。
「一期一杯」を大切に
「スペシャルティコーヒー」をご存知ですか。
スペシャルティコーヒーは、
気候・地理的条件や品種などから生まれる際立った風味特性を持ち合わせた珈琲です。
その理念は
“From seed to cup” =“一粒の種から一杯のカップまで”
の総ての段階において一貫した品質管理が徹底していることが必要とされています。
最後に私たち
HAKUBA COFFEE STANDでは、
茶道の「一期一会の精神」から
一つ一つの出会いを大切に、
二度と同じ時に戻ることはできないのだからその一杯一杯に心を尽くす、
と云う考えを基に丁寧に自家焙煎をして珈琲を長野県白馬村から提供しています。
『元コーヒー苦手』な珈琲屋ガクでした。
最後まで
ありがとうございます。